日本語で相手のことを指していう言葉には、「あなた」「きみ」「おまえ」「きさま」などがあります。
「あなた」は対等か自分より目下の相手に対して軽い敬意をもって呼ぶ場合や、妻が夫を呼ぶ時に使われます。この言葉はもともと離れた場所や今より前のことを表す「あなた(彼方)」から来ています。
そこから離れた場所にいる人を指すようになりました。江戸時代になると、妻が離れたところで暮らす夫を「あなた」と呼ぶようになり、さらに江戸時代中頃には、目の前にいる夫のことも「あなた」と呼ぶようになりました。これが定着すると、今度は夫以外の人を呼ぶときにも「あなた」が使われるようになったそうです。
「きみ」は漢字で書くと「君」となり、もともとは天皇や主君など非常に身分の高い人のことを指す言葉でした。平安時代には「源氏のきみ」などのように、女性が男性を呼ぶときにも使われていましたが、現在では、主に男性が自分と同等か目下の相手に対して用いる言葉になりました。
私たちが普段何気なく使っている言葉も、その由来やもともとの意味を考えると、昔は今とはまったく異なる意味や使い方をされていたものもあるのは面白いですね。